はるくんとゆきちゃん
「違う」
冬の朝みたいな、シャキッとした
さっきのおはほーとはかけ離れた
ゆきの声。起きたな、こいつ。
「なにが?」
かれこれ出会って7年の仲。
ゆきが怒っていることなんて
声からして百も承知で、
なにも察してない風に尋ねる。
ほんとは心臓ばくばくで
一秒が長く感じるけど。
しばらくして、はるが答えた。
「珈琲。いつものじゃない」
あー、なんだ。それか。
ほっと胸を撫で下ろして
また消えたフライパンの火をつけて
バターをいれた。
ジュウウウウウウウ
良い音と匂いが白くて綺麗な
まだ新居の香りのする台所に響く。
「替えたよ。いつものきれてたから
その横にあったやつ買ってみた」