躾のおじかん
エレベーターに乗ったら偶然愛君と二人きりになった。
「お疲れさまです」
確か初めは普通に挨拶を交わして、午後からの勤務に眠そうな愛君の横顔を盗み見していたっけ。
暫くはお互い無言で、私は16階、愛君は18階のオフィスに着くのを待っていた。
その途中、何度か出入りはあったものの10階でまた2人になった。
11階、12階、13階を過ぎたころ、愛君がふとこっちを見た。
ぎくり、心音が跳ねて肩を震わせた私へなぜか向かってくるので、「ちょ、まっ、えっ? 待って!」とか言ったと思う。