ジュリエットなんて呼ばないで
男から聞いたけど、それは悲劇のお話らしい。
ジュリエットという女性と、ロミオという男性。
二人は愛し合っていたのに、身分が違いすぎて、その恋は許されなかったの。
そして二人は、すれ違いで死んでしまった。
「俺はこの話が大好きだ。なのにそのヒロインと同じ名前の女性がお前みたいなやつなんて……」
「なんでガッカリされてるの、私」
すごく腹立つ。
「あんたって意外とロマンチストなのね」
「男がロマンチストで悪いかよ」
「悪いとは言ってないでしょ」
男は不機嫌そうに私から本を取り上げ、鞄にしまった。
私が悪いのかよ。
「……てか、名前言ったんだからあんたも言いなさいよ」
そう言うと、男はすごく嫌そうな顔をして、渋々答えた。
「……優士(ユウジ)」
優士、か。
「お前さ、外国人なの?あ、外国魚?」
「せめて人にして、お願いだから」
魚とか言わないで。
「名前からして日本人じゃねえよな。なんで日本語しゃべれるの?それに……」
うわ、なにこいつ。
いきなり私に興味持ち始めたよ。あれか、名前のせいか?
「……親とかは全員外国の人よ。だからそういう名前なの。でも生まれも育ちも日本」
「人魚って男とかいる?」
「いない」
「どうやって子供生むの」
「産卵期が来れば勝手に生まれる」
「うわ、魚類」
「死にてえのか」
優士は次から次へと質問を繰り出してきた。
私はそれに嫌々ながらも答え、いつの間にか夕方だ。
「やべ、もう帰らねえと」
言うが早いか、優士は少し焦りながら立ち上がる。
ちょっと楽しかったからか、私は淋しいと感じてしまった。
……いや、嘘。淋しくないもん。居なくなってせいせいするわ!
「ハーデス」
「なによ」
「最後に質問」
ま、最後だしね。仕方ないから答えてあげようかしら。
「やっぱ人魚って貝のブラジャーなの?」
「なっ!ッ、ゴババ!」
驚きのあまり、思わず溺れかけてしまった私。
人魚なのに、恥ずかしい……!
「な、なんてこと訊くのよ!このスケベ!」
「さっきから岩で見えないんだよ。隠してるってことは……まさかノーブラ?」
「お前の死因、溺死にしてやろうか」
腹が立ったので脅すと、優士は笑って「冗談」といいながら去っていった。
ジュリエットという女性と、ロミオという男性。
二人は愛し合っていたのに、身分が違いすぎて、その恋は許されなかったの。
そして二人は、すれ違いで死んでしまった。
「俺はこの話が大好きだ。なのにそのヒロインと同じ名前の女性がお前みたいなやつなんて……」
「なんでガッカリされてるの、私」
すごく腹立つ。
「あんたって意外とロマンチストなのね」
「男がロマンチストで悪いかよ」
「悪いとは言ってないでしょ」
男は不機嫌そうに私から本を取り上げ、鞄にしまった。
私が悪いのかよ。
「……てか、名前言ったんだからあんたも言いなさいよ」
そう言うと、男はすごく嫌そうな顔をして、渋々答えた。
「……優士(ユウジ)」
優士、か。
「お前さ、外国人なの?あ、外国魚?」
「せめて人にして、お願いだから」
魚とか言わないで。
「名前からして日本人じゃねえよな。なんで日本語しゃべれるの?それに……」
うわ、なにこいつ。
いきなり私に興味持ち始めたよ。あれか、名前のせいか?
「……親とかは全員外国の人よ。だからそういう名前なの。でも生まれも育ちも日本」
「人魚って男とかいる?」
「いない」
「どうやって子供生むの」
「産卵期が来れば勝手に生まれる」
「うわ、魚類」
「死にてえのか」
優士は次から次へと質問を繰り出してきた。
私はそれに嫌々ながらも答え、いつの間にか夕方だ。
「やべ、もう帰らねえと」
言うが早いか、優士は少し焦りながら立ち上がる。
ちょっと楽しかったからか、私は淋しいと感じてしまった。
……いや、嘘。淋しくないもん。居なくなってせいせいするわ!
「ハーデス」
「なによ」
「最後に質問」
ま、最後だしね。仕方ないから答えてあげようかしら。
「やっぱ人魚って貝のブラジャーなの?」
「なっ!ッ、ゴババ!」
驚きのあまり、思わず溺れかけてしまった私。
人魚なのに、恥ずかしい……!
「な、なんてこと訊くのよ!このスケベ!」
「さっきから岩で見えないんだよ。隠してるってことは……まさかノーブラ?」
「お前の死因、溺死にしてやろうか」
腹が立ったので脅すと、優士は笑って「冗談」といいながら去っていった。