恋 の 欠 片
叫びたくなったけど我慢した。
「叫んだらやめてあげる」
田代が言った。
「・・・ぇ」
「君が苦しむ顔が見たいんだ。今まで目をつけてきた女の子はここまですると絶対に僕を叩いたんだ。苦しみながらね。だけど、君は違う。ますますいじめたくなる」
そっか。
こいつは私以外の女の子にもこんな事をしていたのか。
最低。
死んでも叫ばない。
「嫌です」
断ると、ゆっくり田代の顔が近づいてきた。
唇に触れられる寸前。
「やめろっ」
誰かに吹っ飛ばされた。
ハルだった。
ハルは田代を一発殴った。
田代の頬がだんっ、という音と同時に赤くなる。
田代は裏門まで飛んだ。
飛んだというより飛ばされた。
そしてハルは私の肩を抱いて田代に叫んだ。
「こいつは俺のものだから」
「覚えておけ」
田代はその一言を残して走り去っていった。