ふたり。
エレベーターを降りてすぐに男は私を抱きかかえると一番奥の部屋に向かって歩いた。
「頼むから叫ぶとかやめてね?お嬢ちゃん」
「分かったから、下ろして」
私は足で男の背中を軽く蹴った。
男は私を下ろすと家の鍵を開けた。
家の中は案外散らかっていて甘いバニラの香りがした。
茶色や白なんかの落ち着いた部屋だった。
私は靴のままリビングの真ん中にあるソファーに向かって歩いた。
「お嬢ちゃん、やっぱいい女だね」
男はニヤニヤしながら私の後ろをついてきていた。
私はドカッとソファーにもたれかかった。
私の家のリビングと変わらないくらいの広さだった。
男はシャンパンと水を持って来ると、私の前に跪いた。