涙空



今思えば。あの二週間は呪文と子守唄を聞きに郁也の家に行ってただけな気がする。

あれ?これって無駄になるの?運んだ足、無駄だったの?




「あたし今なら佳奈が何考えてるか言える気がする」

「同意」

「ちょ、二人とも失礼なんだけど。ていうかどうしよう!私補習とか嫌なんだけど!」

「野崎が勉強ちゃんとやってれば良かっただけの話だよね」

「さっきからごもっともなことばっかり郁也が言うんだけど」




溜息を吐き出しそうになって慌てて止めた。駄目だ駄目だ。

溜息つくと幸せが逃げるって言うよね。これ以上不幸に取り付かれたら困るなんてもんじゃない。



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