涙空
「お湯…?」
保健室の水道は、水と湯の両方が使える。
なぜか郁也は、お湯を出してハンカチを濡らしていた。
なんでお湯?また疑問符を浮かべる私には目線を向けずに、郁也はハンカチを絞る。
「これ、目許に乗せて」
「…え、目許に?」
「早く」
「あ、はい」
保健室の椅子に座っていたら郁也に言われた。
手渡されたハンカチを、畳んで目の上に乗せた。じわりと少しだけ熱いハンカチに、また疑問符がひとつ。
「…なんでお湯で濡らしたの?」
「それやると隈に効くって聞いた」
「…誰に?」
「夏樹」
「…なんでまた」
夏樹君?いや、確かに物知りっぽいけども。
ていうかなんで隈のことなんて聞いたんだろう。
「昨日、夏樹に聞いた」
「…え」