涙空




それから5分程経つと、郁也は私の目許に乗せていたハンカチを取った。

じっと見られて、流石に恥ずかしさが募る。




「…な、治った?」

「最初よりは」

「…良かったです」




もう授業始まっちゃってるんだっけ。…サボり決定だな。

ちらりと隣を見遣る。




「郁也、大丈夫なの?私はともかく、授業サボったりして」

「サボりじゃない。保健室に用があったから」

「私の所為、ですよね」

「佳奈ってネガティブだよな」

「、」




―――――『佳奈』。

郁也が私の名前を呼ぶと心臓が慌ただしく騒ぎ出すから、困る。

これだけ静かな室内で、しかも今は授業中だ。

隣にいる郁也に、心音が聞こえているんじゃないかと不安になる。



< 103 / 418 >

この作品をシェア

pagetop