涙空
そこで、すっと頬に伸ばされた郁也の指先。
また、心臓が叫び出す。…え、ちょっと待って、…郁也?
「ちょ、郁也?」
「黙って」
「ちょ、」
す、と指先で唇をなぞられる。…はい?郁也、どうしました?
でも今は騙されるわけにはいかない。また嘲笑われるかもしれない。
「一目がつく場所じゃやらないっていったよな」
「…はあ」
「今は誰もいないから」
「……え?」
ちょっと待って。口角を上げた郁也にぱちりぱちり、瞬きを繰り返す。
……本気?