涙空
「…なんのご冗談…、」
「冗談なわけない」
身動きが取れない。郁也が、私の手首を掴んでいるからだとすぐに気が付く。
おいおい、ちょっと待って!ここ、学校…!
慌てる私なんて気にも留めず、郁也は私との距離を縮める。
「――――――っ…」
思わず、反射的に、瞼をぎゅっと下ろす。
捕まれた手首が熱い。じんじんと、脈打つような熱さに、きっと顔の赤さは尋常じゃないだろうなと思った。
恥ずかしさしか、ない。
「…顔真っ赤」
重なった唇は、一番熱かった。