涙空
「最近もっと酷くなった気がする」
「愛されてる証拠だよ」
そう口に出せば、嬉しくなさそうな顔をさらけ出す怜香。
まあ実際は嬉しいんだと思うけどね。二人とも、なんだかんだ言っても仲は良いと思うから。
「そういえばさ、前の授業ってなんだった?」
「数学」
「え!」
今度こそ手鏡を落としてしまった。がしゃん!音をたてて、床に落ちた。
「ちょっと」顔を顰て怜香が言う。
「あ、ごめん!」
「別にいいよ、割れてるわけじゃないし」
「ご、ごめん」
慌てて拾った手鏡にヒビは入っていない。良かった。
安堵の息を吐き出した。手鏡を壊さないうちに、怜香に返しておこう。
「ありがとう怜香」
言いながら、手鏡を返した。落とさないように。