涙空
思わず溜息が漏れる。
私も結構頑張った方だとは思ったんだけどなあ。
まあ結局は赤点だったんだけど。
「次ってなんだっけ」
そこで、怜香にそう問い掛けた私。
次の授業なんだっけ。
「英語」
「…ええ…」
思わず顔を顰る。
何度も言うようだけど私は容量が悪い。
イコールで繋げると勉強は嫌いだ。その中でも数学と英語は特に嫌いだ。
「私ってなんでこんなに容量悪いかな」
「結構今更」
「今更なのはわかってますけどね」
もうすこし容量が良ければ、郁也に呆れられずに済んだんだろうか。
いや、でも。
「夏樹と藤崎っていつも一緒にいるよね」
「…ああ、そうだね」
ぽつりと返しながら、郁也に視線を滑らせた。
…私が容量が悪くて、あの日放課後に残って郁也と一緒に帰ったんだ。
もしかしたら、いや、もしかしなくても。
…私が『私』じゃなかったら、この関係はスタートしていなかったかもしれない。
「…すこしは感謝するべきなのかな」
「は?なにが?」
「自分の容量の悪さに」
「…意味わからない」
夏樹君の近くにいる郁也は、窓の外を見ている。
…なにも無い一点を見つめていた。
「………」
心なしか、…その瞳が、切なげに揺れていた気がした。