涙空
ゆっくりとベッドから下りて床に足をつく。
クローゼットの中、ハンガーでかけられた制服を取り出して袖を通す。
今日は平日。いつも通り学校はある。
「…行きたくない」
ぽとりと床に落ちていく本音。朝からあんな夢を見たんじゃ、一日気楽に過ごすことなんて出来ない。
……未だに、手首になにかが巻き付いているような気分。私は嫌そうに顔を顰た。
ああ、そういえば。
…最近、なんとなく郁也が『遠く』感じることがある。
喧嘩をしたわけではないし、お互いになにか不満を吐き出したわけじゃない。寧ろ不満なんて、私は感じていない。
ただ、いつも通り、隣に郁也はいるのに、
…まるで彼の心はそこに無いような、心の中の視線は、私ではない場所に向けているような。
そんな感じ。
いつからこんなことになったのかは、わからないでいた。