涙空
―――――――…
「ファンデーションやめたんだ」
朝、私を見るなりそう言った怜香。目線は一直線に私の目許に向かっている。
それに対して、苦笑を浮かべながら口を開いた。
「…うん。だってあからさまだったんでしょ?それに…」
「なに?」
「…恥ずかしいことはもうされたくないので」
思い出すだけで恥ずかしさが募る。困る、あんなことされたら。
察したのか、怜香は私を見ながら「…ああ、あれね」声を漏らした。
こくりと頷く。
「まさかだよね。郁也にあんなことされるくらいなら私、この酷い顔を全世界に公開した方がマシだよ」
「藤崎に顔拭かれる方がマシだと思うけど」
「は?マシなわけないでしょ怜香!あんたは体験してないから言えるんだよ、そんなことを!」
「まず体験したくない」
「それ夏樹君に言わない方がいいと思うよ。しかもその顔はない」