涙空
え、そうなの?思わず聞き返してしまった。
そんな私に、顔色を変えることなく「当たり前」すらりと返される。
「え?え?どんな内容で喧嘩するの?」
「軽い口喧嘩とか。…まあ、あたしも独占欲強いからね。夏樹も夏樹で強いから、…ぶつかり合うこと、結構あるの」
「…意外」
「そうでもないけどね。あんたらだって喧嘩くらいするでしょ?」
顔に貼付けた笑顔は剥がれない。へらへらと笑いながら、また口を開く。
軽く、首を左右に振ってから。
「喧嘩はないよ」