涙空
声が上擦りそうになるのを堪える。…危ない危ない。
別に体調に変化があったわけじゃないし、すこし変な夢を見ただけだし。
すこし、疲れてるだけだから。
「どうしたの怜香、眉間に皴寄ってますよ。…本当、なんにもないよ」
「……」
怜香が苦々しさを顔に貼付けている。こっちまで侵食されそうな、苦々しさだった。
「あのね、…最近、変な夢をね、見るんだよ」
「夢?」
「うん。だから寝れないことが屡々あるんだよ。…って、子供みたいだって今思ったでしょ?ごめんなさいね、怖い夢で眠れないなんて幼稚過ぎますね」
「そんなこと言ってないわ」