涙空
怜香が私の向けていた視線の先に合わせて視線を送る。
そのまま、口を開いて私に問い掛けてきた。
「なんで佳奈は名前で呼んでるのに藤崎は苗字呼びなの?」
「いやいやいや。だって郁也さん、私のこと名前で呼ばないんですもの。佳奈って言われたことないよ」
「頼めばいいのに」
「あれが郁也だからね」
ぽつり、返した。
そういえば郁也って私のこと苗字で呼んでる。
私と怜香と郁也は同じ中学出身だけど、その時から郁也は私のことを『野崎』って呼んでる。
いや、別にいいんだけどね。ていうか名前で呼ばれたらそれこそびっくりだからね。