涙空
空が憂鬱を食した
――――――…
空を見上げれば、絵の具に濡れた筆を滑らせたかのような、
はっきりとした、どこか淡いオレンジ色に染まっていた。ぼんやりと、視界に端に捉える。
「オレンジだね」
「…なんて答えて欲しいんだよ」
「いや、…オレンジだねって」
「オレンジだね」
「やっぱり良いや」
隣を歩く郁也に期待通りにそう答えられる。わかってるけど、郁也って言葉に飾り気がない。
飾り気が全くなくて、いつだってストレートだ。悪い意味で毒舌とも受け取れるけど。
「郁也ってさ、夢とか見る?」
何気なく、そう問い掛けてみる。…夢。まだうっすらと瞳の奥に映像は残っている。
映像はうっすらとしているのに、音だけは、やけにはっきりと耳にこびりついている。