涙空
「なんで夢って見るんだと思う?」
こつん。落ちていた小石を足の爪先で蹴った。
ころころころ、私に蹴られた小石はボールのようにアスファルトの上を転がる。すぐに止まってしまったけど。
「執着心が大きいからじゃない?」
「…執着心?なにに対しての?」
「夢に出てきたものに対しての」
「…、」
下げていた視線を、ぱっと上げた。視界に写るのは、
…アスファルトの地面でもなく、足の爪先でもなく、オレンジ色の空でもなく。…郁也だった。
見られている当の本人は「…なに」相変わらずの表情で口を開く。
「夢に出てきたもの?」
「知りたいなら自分で調べれば?俺は知らない」
「ですよね」
ちょっと勘違いしてた。思わず苦笑い。