涙空
なんか、郁也って聞けばなんでも答えてくれる辞書みたいに思ってた。
失礼だな。本人には言わないようにしておこう。
ぽつり、呟く。
「まあ、夢とかどうでもいいんだけどね」
「どうでもいいなら聞くなよ」
「ごもっともです」
迷惑だと言わんばかりの郁也にそう言う。
…そのとき、近所から私達の耳に届いた、ピアノの音。
郁也よりも、近所の公園で遊ぶ子供よりも、誰よりも早く反応したのは、
――――私だった。