涙空
「中学の時と何一つ変わらないよね、藤崎って」
「郁也が変わったらそれこそ世界の終わりだよ」
「あんたは彼氏をなんだと思ってるの」
「…」
怜香は私に言う。…彼氏をなんだと思ってる、って…。
え?屁理屈な天才少年だと思ってますけど何か。
そう思ったけど口には出さず、心の中で留めておく。
郁也の方へ向けていた視線を、ぱっと自分の方へ戻した。
万が一、あの郁也に聞こえてたら後が危ない。
「言ったら明日どうなるかわからない」
「…それ独り言?」
「独り言です」
怜香が困ったように私に聞くもんだから、とりあえず淡々と返しておく。
…郁也についての学習能力だけはあると思う、私って。