涙空



すっと足元に下ろしていた視線を上げる。

違う、…違うよ。逃げたかったわけじゃない。


だけど、弱々しく否定することしか出来ない。

きっと、怜香が真実に触れてるから。




「…違う」




掠れた声で伝えようとした言葉は、もしかしたら否定の部類には入らないのかもしれない。

やっぱり、胸が痛いと叫んでる。




「じゃあなんでよ。なんで、あれだけの夢があるのに、あんたは逃げてきたの?」

「だってそれは!」

「…弱いからでしょ。佳奈、弱いんだよ、あんたは」

「…っ」




親友の言葉は、ずしりと私にのしかかる。



< 151 / 418 >

この作品をシェア

pagetop