涙空



怜香が顔を歪める。苦々しいその表情に、余計に胸が痛くなる。


でも、だって、私、藻掻いてる。底無し沼のような場所で、藻掻いてるんだよ。

なにも見えない真っ暗な水中を、ただただ一人でもがいてる。




「…だって」

「…」

「……もうすぐ、なんだよ」

「…なにが?」

「…、」




俯いた。
足元に落とした視線。自分の弱々しさが、嫌でもわかる。



――――わかった。わかったよ。

…最近、あの夢を見るのは、……もうすぐだからだ。

もうすぐ、…あの夢に出てきた声の埋まった場所に、行くからだ。






「…三回忌、なんだよ」




呟いた声は、誰かに似ていた。



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