涙空
――――【私】という存在の不安定さに、悲しくなる。
…自己嫌悪。まさにそんな言葉が私にぴったりと寄り添うように、そこにはあって。
どうすればよかった?どうすれば、郁也の表情から、その悲しみの混ざった色を、拭い取ることが出来る?
―――でも。きっと私は、気付いているんだ。拭い取れる、唯一の術を。
「…ごめん」
それが出来ないことに、ひたすら悲しさが募る。
ぽたり、ぎしぎしと唸る教室の床に謝罪を、ひとつ、ふたつ、落としていく。
「……ごめん、郁也」
顔が上げられない。
ああ、駄目だ。情けないよ。
「ごめん」その三文字を繰り返す私に、ストップをかけたのは、郁也だった。