涙空
気づかなかった。
いつの間にか夏樹が気づいていた【癖】。
考え事をしていたことに夏樹が気付いていたことにも、自分の知らない癖にも、驚いた。
――――あたし、そんな癖あったんだ。知らなかった。知らなかったよ。
だってそんなことに気付くほどの余裕、なかったんだから。
「…知らなかった」
零れた本音に、夏樹が苦笑したのがわかった。
「…別に、考え事しろとは言わないけどさ」
「…」
「怜香はさ、自分が思ってる以上に無理すんの。…自分でわかってる?」
「え?」