涙空
怜香が「あたし達よりもさ」ぽつりと呟く。
「あんた達のスタートラインが、まず想像つかない」
「いや、私も仰天でしたよ。郁也から言われると思わなかったから」
「え、藤崎から言われたの?」
「なにその驚き顔」
失礼な。郁也からだよ、一応。一応ね。
怜香は目を見開いて私を見ている。
信じられないと物語るその目。…私も信じられなかったですけどね。
「でも郁也、すごくさらっと言ってきたんだよ」
「…掴み所ないよね、藤崎って」
「私もそう思う」
なんとなく、―――窓際にいる郁也に視線を向けてみる。
…あの日から結構、時間が経つのか。
そう思うと、あの電車の中の会話が、酷く懐かしいと思った。