涙空
「…野崎のこと、怜香は全部把握しなくちゃいけないわけじゃないだろ」
「…わかってるけど」
わかってる。そんなの、あたしだってわかってるけど。
だけど、だから不安定になるんじゃない。佳奈のことを知らないくせに、あんなふうに言葉をぶつけて。
悪いのはあたしでしょ。
「野崎のことを怜香なりに理解してるならそれでいいじゃん」
「…」
視線を手首から上へと上げる。まだ、寂しそうな顔のままだった。
顔を歪めそうになる。そんな顔はして欲しくないのに。
「…野崎は全部知ってて欲しいって、怜香に言った?」
「…言ってない」