涙空
ふっと、夏樹が笑った。その眉は寄ったままだったけど、どこかあたしを安心させてくれる笑顔。
それを視界に入れながらも、夏樹の言葉を待つ。
「なら、いいじゃん。野崎はそんなこと気にしてないんだって」
「…」
夏樹は言う。…でも、本当にそうなのかがわからないんだよ。
佳奈はどう思ってるのかわからない。…傷付いたかもしれないし、藤崎とぎくしゃくしてしまってるかもしれない。
…あたしの【言葉】が原因で。
「…ほら、まただ」
「…え」
手首をきゅっと強く掴まれる。夏樹との距離、気が付けばすごく近い。