涙空
「…そうかな」
「そうだって。自分で言ったじゃん。怜香にだけなんだろ?話したの」
「…うん」
「それが証拠になってんじゃん」
きゅ、また手首に巻き付いた指先に力が込められた。
どくんと心臓が暴れた。夏樹は笑みを浮かべたまま。
「帰るか」
「…うん」
どれくらい時間が経ったんだろう。でも携帯を取り出して確認しようとは思わなかった。
「電車混むんだよなあ」
「夏樹、酔わないでね」
「酔わない酔わない。…怜香、手貸して」
「…もう貸してる」
そう言うと、夏樹は笑いながら、手首からするすると指先を降下させる。
あたしの指と自分の指を絡めて、またあたしに背を向けて歩き出した。
ちらりと空を見れば、さっきより清々しい色。
――――この空は、好きだと思った。