涙空
ああ、はいはい。
持っていたハンカチで口元を押さえ付ける。花柄のハンカチに赤が滲んだに違いない。
桃色のハンカチに、鮮明な赤が滲む。郁也はただ静かに見ていた。
「…怜香、大丈夫かな」
「夏樹がいるんじゃないの」
「いや、夏樹君、いるけどさ。…怜香って結構溜め込むタイプだからさ」
「…」
「ちょっと心配で。…夏樹君は、そりゃ怜香のことはわかってるだろうけど、…怜香、どうしたのかな」
そこで、…もしかしてと浮かび上がる言葉。
「……」
もしかして。怜香は。
『そんなに軽々しい話だった?』
――――私にその話をしたことを、後悔してる?