涙空
まさか。
…でも、否定出来ない。怜香なら、あの怜香なら気にしていてもおかしくはない。
だって、あのとき取り乱した私を捉えた、怜香の瞳は。
すこしの切なさに、ゆらゆらと揺れていたから。
小さな動揺を零したあの怜香が、気にしない筈がなかったんだ。
「…私の所為だ」
呟いた声は、切れた唇から、掠れて零れ落ちる。
押し付けたハンカチに押さえ付けられて、余計に小さく聞こえた。
「…なにが?」
郁也はまだ、私から視線は反らさないでいた。
私が、あのとき取り乱したから。だからだ。