涙空
スタートライン
―――――…
ジージーと夏の風物詩が鳴いている。真夏の教室内はむしむしと暑い。
怜香は苛立ったように顔を顰めて、私に言った。
「暑いんだけど」
「お、落ち着け怜香。それと私にキレられても困る」
「なんであんたそんな何も考えてないような顔出来るの?」
「考えてますが。それ遠回しに私が馬鹿だと言いたいんですかね。そうなんですかね怜香さん」
「なんであたしの名前、『冷夏』じゃなかったんだろう」
「そんな名前の付け方されたら、怜香の両親がそのとき何考えてたかまるわかりで怜香が可哀相だよね」
「暑いんだけど」
「だから私にキレられても困るんですけども」