涙空
「…なに?」
郁也が私を見遣る。
その瞳に、私は映っている、よね?
でも私が【過去】と【自分の姿】を話したら、映してはくれなくなるのかな?
拒絶するかな?されても仕方ないけど。
突き進んで来た逃げ道を折り返してもいいかな。
ねえ、郁也。
「…あのさ、…話しておきたいことがあるんだけど、さ」
瞳を、ゆるゆると郁也に合わせる。
視界に郁也が入って、…落ち着かない。でももう隠すのは嫌だな。嫌だ。
「…座るか」
「…。…うん」
今なら言える気がして。
このまま逃げ道を進むのは、嫌だったから。
郁也は足を進めて、道端に設けられた二人座れるくらいのベンチに腰を下ろした。
ゆっくりと足を踏み出して、郁也の隣に出来たスペースに、座った。