涙空

日常は青春色




「これは無いね」




一枚の紙をぺらりと視界に入れた目前の彼は、一言、私に言った。




「これは無いね」

「繰り返さなくていいんですけど郁也さん」

「じゃあ言い方を変えるよ。有り得ない」

「お前に私のなにがわかる」




腕を伸ばせば、するりと案外容易に、その指先から紙を抜き取ることは出来た。

いまにも握り潰す勢いで奪い返したそれを、机の中にしまい込んだ。



ぐしゃり、音がする。



ああもう、なんでごみ箱に捨てなかったかな。捨てとけば見られなかったのに。

今更過ぎる後悔を感じながら、未だに私に視線を向けたままの彼に口を開いた。



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