涙空




***


がらりと扉を開くと、しんと静まり返る保健室。

誰もいないから、とても静かだ。保健室独特の香りが鼻を霞める。




「なんで保健室?ここで食べるの?」




適当に椅子に座った怜香に合わせて私も座る。

問い掛けながらも、室内に保健医がいないことに気付く。

怜香は私をちらりと見遣ると、口を開いた。




「今日は誰もいなかったから。…佳奈さあ」

「なに?」

「なんかあった?」

「え?」




その聞き方は、なにげなく、本当に軽い聞き方だった。

怜香らしいけど。…なんて答えれば良いのか。本当にすこしの空白をつくってから、返答する。




「…別に、なんもないけど」



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