涙空
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がらりと扉を開くと、しんと静まり返る保健室。
誰もいないから、とても静かだ。保健室独特の香りが鼻を霞める。
「なんで保健室?ここで食べるの?」
適当に椅子に座った怜香に合わせて私も座る。
問い掛けながらも、室内に保健医がいないことに気付く。
怜香は私をちらりと見遣ると、口を開いた。
「今日は誰もいなかったから。…佳奈さあ」
「なに?」
「なんかあった?」
「え?」
その聞き方は、なにげなく、本当に軽い聞き方だった。
怜香らしいけど。…なんて答えれば良いのか。本当にすこしの空白をつくってから、返答する。
「…別に、なんもないけど」