涙空
置き去り道標
―――――…
「ねえ佳奈、お願いがあるんだけど」
「お願い?」
休日の早朝、リビングに入った途端、お母さんが私に言った。
「うん、お願い」そう返したお母さん。お願い?買い物とか?
「なに?お願いって」
「手伝って欲しいの」
「なにを?」
一応言っておくけど私は寝起きだ。頭がいまいち働いていない。
それでも言われた言葉を働かない頭で理解しようと首を傾げる。…手伝って、って?
主語のない話に余計疑問符が浮かぶ。
するとそこで、会話に割り込んできた聞き慣れた声。
「おい。佳奈に無理言うなよ、由奈」