涙空
「まだあたし何も言ってないけどね」
「佳奈、嫌なら嫌って言っていいからな」
「…うん」
「佳音黙ってて!あたしが今話してるんだよ!」
「はいはい」
適当にお母さんに返事をすると、お父さんは再度読んでいた新聞紙に目を通し始めた。
仲良いな、相変わらず。思わず笑ってしまいそうになるのを抑えながら、お母さんに視線を戻す。
「お願いって?」
がさがさがさ、静かなリビングに騒がしく新聞紙の音が響く。
――――ちょ、お父さん煩いんだけど。それ煩いんだけど。
「仕事の手伝い、してほしいんだ」
「…はい?」