涙空



「友達は大切にね」

「なに?いきなり」




今度はこっちが笑ってしまった。いきなりなにを言い出すのかと思えば。

お母さんは笑顔を崩さないまま、再び私に口を開いた。




「…ねえ、佳奈」

「なに?」

「…私みたいに、佳奈には幼稚園の先生になって欲しいなあ」

「…え?」




思わず聞き返した。

そんな私に、お母さんは少しだけ寂しそうに笑ってから言った。




「…なんて。冗談だよ?気にしないで」

「…」

「佳奈は佳奈のやりたいことをやるんだよ。そうしなきゃ勿体ないから」

「……」




寂しそう。

ゆらゆらと、不安定に揺れる笑顔が見えた。



< 231 / 418 >

この作品をシェア

pagetop