涙空
「友達は大切にね」
「なに?いきなり」
今度はこっちが笑ってしまった。いきなりなにを言い出すのかと思えば。
お母さんは笑顔を崩さないまま、再び私に口を開いた。
「…ねえ、佳奈」
「なに?」
「…私みたいに、佳奈には幼稚園の先生になって欲しいなあ」
「…え?」
思わず聞き返した。
そんな私に、お母さんは少しだけ寂しそうに笑ってから言った。
「…なんて。冗談だよ?気にしないで」
「…」
「佳奈は佳奈のやりたいことをやるんだよ。そうしなきゃ勿体ないから」
「……」
寂しそう。
ゆらゆらと、不安定に揺れる笑顔が見えた。