涙空



口に出せば、お母さんは…こくり、一度頷いた。




「佳音はすごく人のことを見てるんだよ。それですごく気を使う。そういうところ、佳奈はそっくり」

「……」

「…気を使わせてるのはあたしなんだけどね」




苦笑を零すと、お母さんは私に背中を向けた。

すると、…ピアノの鍵盤から零れた音。今度は一つではなかった。



何十にも重なった太い束になって、それは室内に響いた。



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