涙空
見上げた先にいる郁也は整った顔をしている。
…私なんかと並ぶと、余計に整って周りからは見えるだろうな。
ちらりと視界に入れた先で、彼が口を開く。
「野崎」
「え、あ、はい?」
見すぎたかもしれない。
気付いてたのかな。ふらふらと視線を泳がせる。
…だけど当の本人は気にすることもなく、疲れたのか、瞼を下ろしたまま私に言葉を届けてきた。
「付き合って」
「――――はい?」
聞き返した。
……とんでもない言葉が聞こえた気がしたんだけど、
……隣にいるのは、間違いなく郁也。
つまりは言葉を発したのは、郁也で。