涙空
「…佳奈は弾きたいと思わないの?ピアノ」
「…弾けないよ」
私は小さい頃、すこしだけピアノを習っていたらしい。
「ピアノをやりたい」と私が両親に言ったから、らしいけど。
「…私、続かなかったんでしょ?ピアノ」
「…あんまり長くは続かなかったね」
始めたは良いけれど、すぐに根を上げたらしい。
飽き性の私のことだ。ピアノよりも遊びたいと思ったんだろう。
「今からやったって良いんじゃない?」
「無理だよ。…ピアノとか、私には無理」
「…佳奈は、不器用だもんね」
――――あたしに似て。
そう言ったお母さんは、また私に笑いかけた。