涙空
世界を赤く染めた
***
二人、並んで歩く。
頭上を追い抜いていった真っ黒な烏を見て、お母さんは不安げに瞳を揺らした。
ゆらゆら、ゆらゆら。揺れている。
店を出て歩いているうちに、日暮れへと刻々と迫ってしまってるからだろう。
「…別にそんな、気にすることないと、思うけど…。夢の話なんだしさ」
不安を取り除いてあげなきゃいけない。その一心で口をついたけど、
あまり効果は得られなかった。返ってくるのは、やはり不安に濡れた声だった。
「…言ったでしょ。リアルだったって」
「でも、夢なんでしょ」