涙空

世界を赤く染めた





***


二人、並んで歩く。
頭上を追い抜いていった真っ黒な烏を見て、お母さんは不安げに瞳を揺らした。

ゆらゆら、ゆらゆら。揺れている。


店を出て歩いているうちに、日暮れへと刻々と迫ってしまってるからだろう。




「…別にそんな、気にすることないと、思うけど…。夢の話なんだしさ」




不安を取り除いてあげなきゃいけない。その一心で口をついたけど、

あまり効果は得られなかった。返ってくるのは、やはり不安に濡れた声だった。




「…言ったでしょ。リアルだったって」

「でも、夢なんでしょ」



< 292 / 418 >

この作品をシェア

pagetop