涙空
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ざわざわと、いつも通りの賑やかな教室で、
ひとり、俯いて溜息を吐き出した。周りのクラスメートは騒がしい。
「おはよう、怜香」友人に言われて「おはよう」と咄嗟にかえした。
佳奈が学校を休み初めて一週間ほど経った。…当たり前だ。
そんな簡単な問題じゃない。…【まだ】一週間しか経ってない、…そう言うべきかもしれない。
一週間なんて、傷を癒すのには短すぎる。
佳奈のことだから、そろそろ学校に顔を出すかもしれないけど、あたしに笑ってくれるだろうか。
そんなことを考えていたあたしの耳に届いた、がらり、と教室の扉が開く音。
「…佳奈」
小さく呟いた。
彼女にはきっと届いていないだろうが。
がたんと席を立つ。
…まずあたしがしなくちゃいけないのは、彼女に謝ることだ。