涙空
「特になにも言われなかったけど」
昨日、郁也は私になにも言ってこようとはしなかった。
変に触れないでいてくれた方が有り難いけど。郁也らしいと言えば郁也らしいけど。
…だけど、彼はなにも気にならなかったのだろうか。そんな欲張った疑問が露になる。
それを隠すように口から言葉を零した。
「…まあ、郁也らしいよね」
「…佳奈」
怜香の声が耳に届く。
郁也とは違って、怜香は私に感情を投げかけてくる。それを受け取るには私には重過ぎた。
怜香はまだ【後悔】してる。今の表情はまだ、後悔の色で塗りたくられている。