涙空
「あのさ、怜香」
「…なに」
「…もういいよ、私、最初から恨んだりしてないんだから」
ざわざわざわ、風が吹いて髪を浚う。
そっと口をついてから怜香に視線を滑らせる。
ほら、また苦しそうな顔をしてる。
「もういいよ」
ねえ怜香、もう自分自身を責めるの、やめなよ。
辛いよ。そんなの見てるだけで辛いんだってば。もう、終わりにしよう?
怜香が自分を責めたところで、それは怜香が苦しむだけなんだよ。
…そんなの、私は望んでない。
「…なんで」
「怜香、もうやめなよ。私そんなことしてほしいわけじゃない。…そんなことしたって、怜香が辛いだけだよ」