涙空



「あのさ、怜香」

「…なに」

「…もういいよ、私、最初から恨んだりしてないんだから」




ざわざわざわ、風が吹いて髪を浚う。


そっと口をついてから怜香に視線を滑らせる。

ほら、また苦しそうな顔をしてる。




「もういいよ」




ねえ怜香、もう自分自身を責めるの、やめなよ。

辛いよ。そんなの見てるだけで辛いんだってば。もう、終わりにしよう?


怜香が自分を責めたところで、それは怜香が苦しむだけなんだよ。


…そんなの、私は望んでない。




「…なんで」

「怜香、もうやめなよ。私そんなことしてほしいわけじゃない。…そんなことしたって、怜香が辛いだけだよ」



< 355 / 418 >

この作品をシェア

pagetop