涙空
「ね、もう止めてよ」
終わりにしようよ。
また、怜香は普通に笑うべきだよ。
何にも縛られたらいけない。狭い枠は外して、自由の中で笑うべき。そうでしょ。
「怜香が後悔してるほうが、私は悲しい」
「…佳奈」
「悲しい思いはもうしたくない」
家族を一人亡くしたときに味わった寂しさと底知れない胸の痛み。
もう、そんなもの味わいたくない。
誰にも味わいさせたくない。…郁也にも、怜香にも、誰にも。
「怜香が苦しむのは間違ってる」
もう十分、怜香は自分自身を責めた。
もういいよ、償えなんて言わないから。だからもう、終わりにしよう。