涙空
「…あたし」
「ごめん、怜香。…今まで辛い思いさせて、ごめん」
痛かった。味わいたくなかった痛みが胸を襲う。
ずきりずきり、痛い。
こんなの味わって欲しくない。怜香には。
私の、大切な人には。
「佳奈、…ごめん」
怜香が私に言った。
その瞳から、一筋涙が流れた。悲しみを描くそれを見たくはなかったけれど。…怜香、ごめんね。
「私は大丈夫だよ。それにほら、もう随分前の話でしょ」
「何年前でも変わらないでしょ」
「そんなことないよ。…それに私、家事とかは少しずつだけど出来るようになったし、…お父さんだって笑ってくれるし、…大丈夫だよ」