涙空
辛くない、なんて言ったら、まだ嘘の枠に入るかもしれない。
だけどもう実感は十分に湧いてるんだよ。
【お母さんはもう隣にいない】
【あのピアノの音色はもう耳に届かない】
【彼女の笑顔はもう見えなくなった】
【声が聞こえない】
【思い出しか残っていない】
【写真の中でしか、私達は並べない】
全部全部全部全部全部、
もうわかってるよ。
「大丈夫だから」
「、」
「怜香が苦しまないように次は私が頑張る。それならいいでしょ?」
数学もなるべく赤点取らないように頑張るよ。
家事も、文句言わずに毎日やるから。
本当は知ってるんだ。お父さんがお母さんに向かって、涙を流してることを。
それを勇気づけるのも、きっと今は私の役目なんでしょ?
「…だから怜香」
「…もう、抱え込まないで」