涙空
髑髏は毒を吐く
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お母さん、そっちで楽しくやっていますか。
返ってくるはずない質問を投げかけてみる。
お母さんがいなくなってから月日が流れて、私も家事には慣れたよ。
頼りっぱなしだったあの日から、すこしは成長出来たんじゃないかな。
【あの日】、お母さんがいなくなる瞬間のあの恐ろしい【赤色】は未だに鮮明に覚えてるけど、
――――それ以上に、家族三人で笑いあった日常も鮮明に覚えてる。
楽しかったね。
我が儘を言うなら、また三人でお母さんの作った夕食を食べたかったな。もう無理だけど。
ああ、お父さんなら大丈夫。大丈夫だと思うよ。
でもわからないな。…お父さん、私の前だとすごく大丈夫そうな顔してくれてるんだよ。
でもきっと、お母さんの面影は絶対に消えないんだと思う。
それほど大切な人だったんだよ、お母さんが。
お母さん、私の、たまに一人で突っ走る癖はまだ直ってないみたいです。
迷惑かけるけど、私がそっちに行くまでは、見守っていてくれると助かります。
じゃあ、また。
また来るよ。
来年も再来年も、その先もずっと通い続けるよ。
いつもならお父さんと一緒なんだけど、今日は仕事があるらしいから。
だから今日は、違う人と来てみたんだ。
「…郁也、ごめんね。付き合わせて」