涙空
「…私じゃ、似合わないかな」
「…この際はっきり言うけど佳奈に【可愛い】物は似合わない。…あくまで俺の持論だけどな」
「そうじゃなくてね。…ていうか私、可愛いもの似合わないんだ?似合わないんだ?」
ショック。はっきり言いすぎ。それはショック受けるわ。
だけど私が聞きたいのは『この花束が似合うかどうか』じゃなくて。…いや、私の聞き方も悪かったけど。
私が聞きたいのは――――、
「…小さい子の成長する姿をすぐ傍で見てたいと思うのって、…柄じゃないかな。私じゃ似合わないかな」
また、風が吹く。さっきよりも弱気になった風は私の口にした言葉と似ていた。
無性に、――――この墓に眠る彼女に、会いたくなってしまった。
彼女なら答えをくれる気がした。曖昧に濁した答えじゃなくて、…明確なはっきりとした答えを。
郁也を真っ直ぐに、縋るように見つめた。
「…佳奈はなんでやりたいんだよ」
その瞳が、問い掛けてきた。
「え」と声を漏らした。なにが?聞き返す暇を、郁也はつくらない。
「…佳奈はなんでやりたいんだよ、その職業」